2010年 6月 26日(土曜日) 16:51

MS Office 2007以降の『リボンインターフェイス』はなぜ使いにくいのか?

Microsoft Office 2007以降では、従来からのメニューバーが廃止になり、『リボンインターフェイス』が採用されました。

初めてOffice 2007を使ったときは、とにかく、今まで使い慣れた機能が従来どおりに使えないことに非常にストレスを感じました。

・フォントのサイズを変える

・オートフィルタを設定する

など、非常に基本的でそれまではほとんど無意識でこなしていたことでいちいちつまずいて、本来の作業に集中できません。

それでも、時代の変化、新しい流れについていくには、労力をかけてでも新しいものに慣れるように努力をしなければ、と前向きにとらえて、がんばって使っているうちに何がどこにあるかは少しずつ覚えてはきましたが・・・

リボンインターフェイスの操作に慣れてきた今でも、ひとつの操作をするのに、クリックをする回数が以前のOfficeよりも確実に増え、生産性は確実に下がっていると感じます。

そこで、リボンインターフェイスはなぜ使いにくいのかを考えてみました。

失われたツールバーの機能

従来のインターフェイスでは、

・メニューバー

・ツールバー

の2つが別々にあり、それぞれに異なる明確な役割がありました。

メニューバーの役割は、そのアプリケーションでユーザが使える機能を全部網羅し、わかりやすく分類して表示するという役割、

ツールバーには、頻繁に使う機能へのショートカットを常時表示して、すぐに使えるようにするという役割がありました。

 

一方、新しいリボンインターフェイスは、一見、従来のメニューバーとツールバーの役割を同時に担っているように見えますが、実際はそうではなさそうです。

リボンインターフェイスは全機能を網羅していますから、リボンインターフェイスの役割は、従来のメニューバーの役割を果たしているといえます。

見方を変えると、リボンインターフェイスは、今までは縦長方向に、文字列と区切り線で表示されていたメニューを、横長方向に、大きさの異なるアイコンと文字列、区切り線で表示するようにしたものと見ることができます。

しかし、一つのタブを選択すると、他のタブに含まれる機能が隠されてしまい、それらに素早くアクセスする手段が失われてしまいます。

つまり、リボンインターフェイスでは、従来ツールバーが持っていた、常時表示され、よく使う機能に素早くアクセスするという機能が失われてしまっています。

たとえば、私はWordを使うときには変更履歴を表示したり非表示にしたりという操作を頻繁に行うのですが、「変更履歴の記録」というアイテムを選ぶために、一度「校閲」タブを選択すると、その後はずっと「校閲」タブが選択されたままです。

すると、私の画面の従来ツールバーがあった位置には、「リサーチ」とか、「類義語辞典」とか、「翻訳」とか、過去10年以上Wordを使ってきて一度たりとも使ったことのない、今後も絶対に使うことのない機能が、強制的に大きなアイコンで居座り続けることになります。そして、次に「中央揃えにしたい」とか、「罫線を引きたい」という頻繁に行う操作をしようとしたときに、いちいち別のタブを一度クリックしなければならなくなります。

現在隠されてしまっているタブに含まれる機能にアクセスするためには、その機能がどのタブに属しているかを正確に記憶していて、それを思い出さなければならないという精神的な負担と、一度そのタブをクリックしなければならないという操作が従来よりも余分に必要になるわけです。

クイックアクセスバーはツールバーの代わりになる?

それでは、ツールバーはどこへ行ってしまったのでしょうか?

初期のOffice2007では、完全にその役割を担うものがなくなってしまっていたようですが、アップデートで「クイックアクセスツールバー」が追加されたようです。

クイックアクセスツールバーは確かに頻繁に使う機能に素早くアクセスする手段ではありますが、画面の左隅の狭いエリアで、あまりたくさんのアイコンは追加できません。また、いちいち手動でよく使う機能を追加しなければならないので、非常に面倒です。従来のツールバーのように、グループごとまとめて表示/非表示を切り替えたりできません。

デザイン的にも、クイックアクセスツールバーの位置は「欄外」的なイメージです。頻繁に使うクイックアクセスツールバーよりも、リボンインターフェイスに並んでいるあまり使わない大きなアイコンの方にどうしても目が行ってしまいます。

クイックアクセスバーは従来のツールバーが担っていた役割を代替できているとは思えません。

階層深すぎ!かくれんぼする気分じゃないんです。

よく使う機能に素早くアクセスするツールバーの機能が失われてしまったことによる弊害は、ある機能を使う度に、毎回、上の階層から深い階層までを辿らなければならなくなることです。

リボンインターフェイスの中には▼がたくさんあり、多くの機能がこの下の階層に隠されています。ある機能を探すとき、▼をクリックしなければ見つけられない機能が多すぎます。さらには、▼をクリックした後、さらに右向きの三角をポイントしなければ現れないものなど、階層が深いものもあります。

たとえば、従来は画面下方に直線や四角形などよく使う図形を描画するアイコンを常時表示させることができ、1クリックでほしい機能にたどり着くことができました。リボンインターフェイスで四角形を描画するには、「挿入タブ」で1クリック、「図形」アイコンで2クリック目、そこで表示される非常にたくさんの図形の中から目で四角形を探して・・・見つかったら・・・四角形のアイコンをクリックして3クリック。今まで1クリックでできたことが、3クリック必要になっています。

しかも、そこにたどり着くまでにはいくつもの難関を越えなければなりません。四角形を描きたいと思うことはあるけど、四角形を「挿入したい」と思う人はあまりいないので、「挿入」を連想するには訓練が必要です。そして、挿入の中に「四角形」があることを期待して探しても・・・ありません。そこで次に、もっともそれらしい「図形」をクリックするのですが、一度にあまりにたくさんの図形が表示されて、その中から四角形を見つけるのが容易ではありません。

勝手に動かないで!!

従来のツールバーは、非常にシンプルでした。はじめに自分のよく使うツールバーを表示するようにしておけば、後は常に同じ場所にいてくれました。勝手に動いてしまったり、なくなってしまったりすることはありませんでした。

人間の脳はどの機能が画面のどの辺りにあったかをイメージで記憶しています。たとえば、だいたい右上のほうとか、下の真ん中辺りとか。

でも、リボンインターフェイスでは、タブを切り替える度に、画面の風景が一変してしまいます。別のタブが選択されていることを忘れて、「確か”検索”は左上のあたりにあったのに・・・」と思っても、そこには全く違うアイコンが並んでいるということになります。

しかも、ウインドウのサイズを変えてしまうと、アイコンのラベルが表示されたり非表示になったりするので、ウインドウの幅が変わる度に、全体の印象が変わり、ある機能のアイコンがどこにあるかを一度覚えても、次に見たときにはまたわからなくなってしまいます。

さらに、普段は存在しないのに、場面に応じて表示されるタブがあります。例えば、図形を描画してそれを選択したときに表示される「描画ツール」の「書式」タブなど。場面に応じて必要な機能を表示してくれるというのは一見便利なようで、実際にはどのタブはどうすれば出せるのかを悩んだり、普段はないタブが表示されていることに気付かなかったりして厄介な場合がほとんどです。

苦労してどこに何があるか覚えたのだから、勝手に動かないでほしいんです!

大小さまざまなアイコンは見やすい?

リボンインターフェイスでは、タブの中のアイコンの大きさがまちまちです。よく使うものは大きいアイコンで見つけやすく、あまり使わないものは小さいアイコン・・・ということなのでしょうが、残念ながらぜんぜんそうなっていません。「コピー」と「貼り付け」は同じ頻度で使いますが、現在私のWordでは、「貼り付け」がとても大きいアイコンで、コピーが小さいアイコンで表示されています。

使用頻度の判別などは、使い込んでいくうちによくなったり、アルゴリズムで改善できるのかもしれませんが、根本的に大きさが不ぞろいで、しかも場所によって1段だったり、2段だったり、3段だったり、ラベルが表示されたりされなかったり、横に並んでいたり縦に並んでいたりするのは、実に見にくく、使いたい機能のアイコンが非常に見つけにくいと感じるのは私だけでしょうか・・・?

リボンインターフェイスの必然性はあるのか?

Microsoftの説明では、

現在ではアプリケーションの機能が非常に多くなり、メニューとツールバーのシステムは以前のように効率的ではありません。

となっていますが、Office2003と2007で、それほど機能が増えたようには思えません。

そこまで緊急に全てのインターフェイスを置きかえなくても、しばらくは実験期間として、新旧両方のユーザインターフェイスに切り替えられるようにするなどして、新しいリボンインターフェイスの評価をしてくれてもよかったのではないかと思います。

「次のバージョンのオフィスでは、従来とはまったく異なる、何か斬新なことをやらならければならない」という、マイクロソフトのあせりのようなものさえ感じられてしまいます。

リボンインターフェイスはなぜ使いにくいか?

リボンインターフェイスの使いにくい理由は他にもたくさん挙げられそうですが、以上をまとめると、

  • 従来ツールバーが担っていた、頻繁に使う機能に簡単にアクセスするという機能が失われてしまった
  • ウインドウのリサイズやタブの切り替えで画面の印象が変わってしまい、どこに何があるか記憶しづらい
  • 大小さまざま、ラベルがあったりなかったり、縦並びだったり横並びだったりするアイコンが見づらい

などがあるのではないかと思います。

未来志向の新しい試みはすばらしいのですが、どんなに新しいものでも従来の機能を損ねてしまうのは進化ではなく退化です。本当に従来よりも使いやすくてまったく新しいインターフェイスができるのであれば大歓迎なのですが、そうでないならば、「ユーザーエクスペリエンス(UX)」を重要視するようになったMicrosoftは素直に間違いを認めて、少なくとも従来のメニューバーとツールバーでも使えるようにしてほしいところです。

または、それでもリボンインターフェイスの方が使いやすいんだという理由があれば、是非聴かせていただければと思います。

 

 

2010/11/28 追記

半分怒りを込めて書いたこの記事のアクセス数が意外と多かったので、ちょっと整形しました。「リボンインターフェイス」でGoogle検索するとこの記事がMSのオフィシャル説明記事よりも上位に上がってきてしまうみたいで。。。^^;

2010/11/29 追記

Office 2010のリボンインターフェイスを、2003のメニューバーとツールバーのように表示してくれるソフト"Back to 2003 for Office 2010"を購入してみました。

Back to 2003 for office2010 [ダウンロード]
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リボンのカスタマイズ機能を駆使してメニューバーと従来のツールバーを一つの"Back To 2003"タブの中に再現した感じです。もともとある他のタブは非表示にすることができます。

基本的にはリボンインターフェイスを使っているので、2003のようにツールバーをフローティングさせたり、画面の下にツールバーを配置したりすることはできません。また、描画ツールなどのタブが自動表示されてしまうと、Back To 2003タブが隠れてしまいます。それでも、導入前に比べれば十分使いやすくなりました。

Office 2007用にはフリーソフトも出ているようですが、Office 2010用はないようなので、Office 2010をお持ちの方にはおすすめです。+Dのこちらの記事も参照。

最終更新日: 2012年 2月 27日(月曜日) 10:53
くらち たかよし

くらち たかよし

モバイル・Webアプリ作家。最近は主にiPhoneアプリ制作を手がける。企画から、UIデザイン、設計、実装、テスト、多言語対応、ユーザーサポートまでを1人〜数人の個人で行う全人的開発手法の確立を目指している。

使う言語はObjective-C, C++, C#, Java, PHPなど。Web関連で使うものはCakePHP, MySQL, Joomla! CMSなど。デザインはシロウトながらPhotoshopとIllustratorをなんとかがんばって使う。

場所や時間に縛られない、インターネット時代の新しい働き方、自由な生き方を模索中。海外移住、低予算&低リスク起業、キャリアデザイン、心理学などにも興味あり。

Web: awaresoft.jp/